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タイトル:特許公報(B2)_ビタミンD類やビタミンK類を配合した外用剤
出願番号:1997519577
年次:2006
IPC分類:A61K 31/59,A61P 27/02


特許情報キャッシュ

喜多 喜代司 JP 3738450 特許公報(B2) 20051111 1997519577 19960422 ビタミンD類やビタミンK類を配合した外用剤 喜多 喜代司 000158677 喜多 喜代司 JP 1995335587 19951120 JP 1995349929 19951213 JP 1995351708 19951218 20060125 A61K 31/59 20060101AFI20060105BHJP A61P 27/02 20060101ALI20060105BHJP JPA61K31/59A61P27/02 A61K31/59 特表平5−503922(JP,A) 特開昭63−145233(JP,A) 欧州特許出願公開第512814(EP,A1) 国際公開第96/29079(WO,A1) Advances in Experimental Medicine and Biology ,Vol.350,(1994)p285−287 2 JP1996001082 19960422 WO1997018817 19970529 13 19970811 2002018020 20020815 森田 ひとみ 齋藤 恵 佐伯 裕子 【技術分野】【0001】本発明は、眼科用組成物や皮膚用組成物等の外用剤に関し、更に詳細には、ビタミンD(エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール)配合の眼科用組成物により受傷眼球組織の治癒調節や眼疾患の治療を行い、又、ビタミンD類やビタミンK類配合の眼科用組成物や皮膚用組成物により有害紫外線より眼球組織や皮膚を保護するための、これら外用剤に関する。【従来の技術】【0002】他の異性体との混合物であったビタミンD1を精製した抗クル病活性の高いビタミンD2及びその後研究されたビタミンD3は多くクル病、骨軟化症、骨粗鬆症、線維性骨炎、骨硬化症等の骨疾患、乳癌や大腸癌等の悪性腫瘍、乾癬の皮膚病の患者の治療に現在使われている。一般には単にビタミンDと言う時、抗クル病活性の高いビタミンD2(エルゴカルシフェロール)とビタミンD3(コレカルシフェロール)を指す。【0003】一般にビタミンDや活性型ビタミンDはその特性試験において、265nm付近に吸収極大(分子吸光係数、約18,000)を持つ紫外線吸収スペクトルを有している。この紫外線吸収帯域は240〜290nmである。例えば、エルゴカルシフェロール、25−ヒドロキシビタミンD2、1α,25−ジヒドロキシビタミンD2、24,25−ジヒドロキシビタミンD2等は、分子吸光係数、約18,900に於いて、265nm付近に吸収極大を持つ紫外線吸収スペクトルを有している。以上の他にプロビタミンDやプレビタミンDも同様な紫外線吸収スペクトルを有している。プロビタミンDとして、エルゴステロールや7−デヒドロコレステロールは、分子吸光係数それぞれ、11,000と10,920に於いて、271、281、293nmに吸収極大を持つ紫外線吸収スペクトルを有している。プレビタミンDとして、プレエルゴカルシフェロールやプレコレカルシフェロールは、分子吸光係数、9,000に於いて、260nmに吸収極大を持つ紫外線吸収スペクトルを有している。【0004】治療用ビタミンDは経口或いは注射による投与であり、皮膚病では皮膚への活性型ビタミンD軟膏による投与がある。ビタミンDは、肝臓、腎臓でその分子構造に変化を受け、生理活性の高い活性型ビタミンDと成ることが分かっている。従来より、人体局所へのビタミンD、エルゴカルシフェロールやコレカルシフェロールの投与はその局所組織への治療効果がなく、例えば、乾癬の治療には有効ではないとされている。【0005】活性型ビタミンD3としてコレカルシフェロールの誘導体であるカルシトリオール(1α,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール)が発見された後、ビタミンDに単にカルシウム調節作用だけでなく、他の生理活性があることが分かってきた。活性型ビタミンDとしては、ステロール環A環炭素C1位と側鎖炭素C25位の内の少なくとも一つが水酸化された活性型ビタミンDが、カルシトリオール(1α,25−ジヒドロキシビタミンD)、1α,24−ジヒドロキシビタミンD,アルファカルシドール(1α−ヒドロキシビタミンD)、カルシフェドール(25−ヒドロキシビタミンD)、1α,24,25−トリヒドロキシビタミンD,1β,25−ジヒドロキシビタミンD、22−オキサカルシトリオール、カルシポトリオール、KH1060、等がある。類似体としてはジヒドロタチステロールがある。細胞内に於いて活性型ビタミンDレセプターがある事が分かり、活性型ビタミンDが種々のサイトカイン産生を抑制する事から細胞活性の抑制の研究も進められている。【0006】眼科でビタミン欠乏による症状として、ビタミンA欠乏による夜盲、球結膜のBitot斑、結膜・角膜乾燥症等があり、ビタミンB1欠乏では脚気弱視があり、ビタミンB2欠乏ではびまん性表層角膜炎があり、球後視神経炎や視神経萎縮が現れることがあり、ビタミンC欠乏では壊血病に於いて眼瞼、結膜、網膜に出血を見ることがある、等が知られている。【0007】角膜手術後の患者に於いて、術後より、角膜炎症部位の創傷修復過程にある細胞に過形成が起こり、その上、過形成した細胞代謝産物により角膜の透明性低下と屈折変動が起こる場合がある。正常な角膜上皮細胞は普通5層程度であるが、外傷が角膜実質に及び複雑な損傷を受けている場合、実質を覆う角膜上皮細胞は約10層にも及び事がある。角膜実質まで受傷した角膜細胞は過形成を行い、代謝産物を過剰に産生し、治癒を早める。重層化した上皮細胞はいづれ正常な層となるものの、治癒過程に起こる一過性の上皮細胞重層化やその重層化した細胞や実質細胞の代謝産物により角膜の屈折や透明性に影響を与える。又、角膜手術後にステロイド剤を投与するが、ステロイド緑内障やステロイド白内障が副作用として知られている。受傷角膜の回復手術や角膜に外傷を与える眼科手術として、角膜屈折矯正術、白内障手術、眼内レンズ移植術、翼状片手術、角膜異物除去術、角膜移植術、角膜形成術等がある。【0008】角膜変性症は角膜上皮、実質或いは内皮細胞の代謝異常により、主に異性蛋白が実質細胞内に堆積し角膜に混濁を起こす病気である。角膜変性症としては、顆粒状角膜変性症、斑状角膜変性症、格子状角膜変性症、膠様滴状角膜変性症、シュナイダー角膜変性症、フランソワ角膜変性症等がある。一方、角膜潰瘍は、角膜上皮細胞がコラーゲン分解酵素を過剰に産生し、潰瘍を起こす病気である。従って、角膜変性症と角膜潰瘍は、その発症原因や臨床所見が異なる。【0009】紫外線は目に対し有害であることは良く知られている。特に波長200〜315nmでは光線角膜炎の誘因となる可能性があるとされており、一般的な細胞類に対して特に260nmに於いては、催奇性や発癌性の原因となることが知られている。紫外線は肌に対し有害であることも良く知られている。特に波長200〜315nmでは日焼け、染み、そばかすの誘因となる可能性があるとされている。皮膚において、紫外線260nmは皮膚癌の誘因であるとされている。又、従来の紫外線防止剤は、眼や、眼の回りには使用してはならないとされている。大気中の成層圏のオゾン層により286nm以下の短波長の紫外線は地表には届かないとされている。しかしながら、オゾン層は一気圧下では2−4mmの層と言われており、フロンガスや硝酸メチル等がオゾン層を不安定にしているとの報告もあり、南米のチリやオーストラリアでは皮膚癌の増加が報告されている。尚、一般に多用されている紫外線滅菌器のピーク波長は254nmである。【0010】1991年6月1日発行の、米国、オキュラー・サージャリー・ニュース、1ページ、ではエキシマレーザー角膜切除術後加療中の患者が紫外線により視力障害が起こったり、浮腫が生じた可能性があると報じている。角膜疾患の患者に於いて、角膜炎症部位の細胞に過形成が起こり、その上、その細胞代謝産物により角膜の透明性低下と屈折不良が起こる場合がある。炎症時の角膜細胞は代謝産物を過剰に産生する。炎症状態にには無いが、角膜上皮細胞や実質細胞の代謝産物としてコラゲナーゼや異性化した蛋白が見られる角膜疾患もある。重層化した代謝産物は角膜の屈折や透明性に影響を与える。コラゲナーゼや異性化した蛋白が見られる角膜疾患の治療にステロイド剤が有効でない事がある事も知られている。総合的に、角膜疾患として、角膜炎、角膜潰瘍、角膜変性症等がある。【0011】白内障手術では、通常、水晶体嚢外摘出術が施され、水晶体前嚢周辺部と後嚢を残す。しかし水晶体上皮細胞が水晶体嚢内に残余し、その残余した水晶体上皮細胞が水晶体内で長期に渡って増殖、伸展し、またその代謝産物、例えばコラーゲン、により水晶体嚢の混濁を起こし患者の視力に悪影響を与える後発白内障を起こす場合がある。白内障患者のこの後発白内障による視力表二段階低下は一般に術後1年目に約10%、術後2年目に約20%の患者に起こると言われている。結膜角膜乾燥症はドライアイと呼ばれ、眼科医師らの討議の的ともなっている。日本評論社出版の雑誌「ドライアイ」は、ドライアイを涙液分泌減少症と乾性角膜結膜炎と分類し、その原因を涙液分泌減少と角膜結膜障害との二つに分けて説明している。コンピューターやテレビ等の画面を見ていると、瞬目数が減少したり、風のある日、埃っぽい環境、オゾン、窒素酸化物等など環境が結膜角膜乾燥症の一因となると考えられてもいる。ある原因により角膜上皮細胞や結膜の杯細胞や杯細胞類似結膜上皮細胞に角化が起こり、それが涙液を角膜や結膜にとどめられないか、その角膜や結膜の炎症反応で涙液を構成するムチン層、涙液層、油層の三層のいづれかに異常な減少が起こり、結膜角膜乾燥症が起こると言われている。従来より結膜角膜乾燥症に対する療法として、人工涙液、ドライアイ・メガネ、漢方薬、涙点プラグ等の応用がある。【0012】ビタミンKの作用には血液凝固因子の活性化作用がある。最近ビタミンKと骨代謝作用の関係が研究されている。又、ビタミンKはビタミンD3の骨代謝作用を増強するとの報告もある。ビタミンKは紫外線吸収域として240〜270nmを有しており、脂溶性である。ビタミンK2は側鎖が反復するメナキノンである。更に詳しくは、ビタミンK1に於いて、分子量450.7、紫外線吸収極大は242〜269と325nmに存在し、ビタミンK2(メナキノン7)に於いて、分子量649.2、紫外線吸収極大は243〜270と325〜328nmに存在する。【発明の開示】【発明が解決しようとする課題】【0013】解決しようとする問題点は、受傷した眼組織の治癒過程における上皮細胞の重層化による視力障害、代謝異常による各種眼科疾患、皮膚や眼に有害な紫外線の防止対策、そして結膜角膜乾燥症であるドライアイ対策等である。【発明が解決するための手段】【0014】上記の課題を解決するための本発明の第1の目的は、角膜受傷後の角膜混濁及び角膜屈折不良を防止するための眼科用組成物を提供することである。本発明の第2の目的は、角膜疾患の治療及び角膜混濁及び角膜屈折不良を防止するための眼科用組成物を提供することである。本発明の第3の目的は、結膜角膜乾燥症を予防及び治療するための眼科用組成物を提供することである。本発明の第4の目的は、白内障手術後の後発白内障を予防するための眼科用組成物を提供することである。本発明の第5の目的は、眼球組織を有害紫外線より防護するための眼科用組成物を提供することである。本発明の第6の目的は、皮膚を有害紫外線より防護するための皮膚用組成物を提供することである。【0015】本発明者は、第一に、活性型ビタミンDとなる前のビタミンD、つまり、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、が投与された眼局所において、正常化を必要とする細胞に入り、活性型に変換され、その細胞の正常な分化誘導を行うか或いはその細胞が産生する各種蛋白類を細胞質で調節していると考え、発明に至った。よって、本発明においては、眼組織の創傷治癒の調節、角膜変性症或いは角膜乾燥症の予防や治療をビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、を有効成分として眼局所へ直接投与する。本発明は、眼科手術としての角膜屈折矯正術、白内障手術、眼内レンズ移植術、翼状片手術、角膜異物除去術、角膜移植術、角膜形成術等の外傷眼組織の治癒調節し、或いは、顆粒状角膜変性症、斑状角膜変性症、格子状角膜変性症、膠様滴状角膜変性症、シュナイダー角膜変性症、フランソワ角膜変性症等の角膜変性症を治療し、角膜混濁及び角膜屈折不良を防止する眼科用組成物を提供するものである。【0016】第二に、プロビタミンDからビタミンD代謝産物に至る全てのビタミンD類或いはビタミンK類が、人体に有害と言われる紫外線帯域を吸収する外用剤として安全に人体に使用できると考え、発明に至った。結膜角膜乾燥症はドライアイと呼ばれ、瞬目数の減少、風のある日、埃っぽい環境、オゾン、窒素酸化物等の環境が一因となっている。結果として角膜上皮細胞、結膜杯細胞、杯細胞類似結膜上皮細胞に角化が起こり、その乾性角結膜炎が涙液を減少させ、結膜角膜乾燥症が起こる。ゆえに、ビタミンDや活性型ビタミンD及びビタミンD類似体の内のいづれか一つを有効成分として、結膜角膜乾燥症を予防或いは治療する眼科用組成物とした。ビタミンDとしての、エルゴカルシフェロールやコレカルシフェロール、及び、活性型ビタミンDとしてステロール環A環炭素C1位と側鎖炭素C25位の内の少なくとも一つが水酸化された活性型ビタミンDが有効である。活性型ビタミンD類似体であるジヒドロタチステロールも、この結膜角膜乾燥症を予防或いは治療する眼科用組成物の範疇に入る。【0017】本発明のビタミンD剤に於いては、抗クル病活性を応用するものではなく、結膜角膜乾燥症に於いて、角化した或いは角化しようとする結膜杯細胞、杯細胞類似結膜上皮細胞、角膜上皮細胞等に正常な分化を誘導させようとするものである。つまり、投与されたビタミンDは正常細胞には何等影響を与えないが、乾性角膜結膜炎になった結膜杯細胞、杯細胞類似結膜上皮細胞、角膜上皮細胞等の分化を誘導し、活性型ビタミンDにおいては結膜杯細胞、杯細胞類似結膜上皮細胞、角膜上皮細胞等の分化の誘導は、活性型ビタミンDが直接に細胞内のビタミンDレセプターに接着し、複合体となり、核内に取り込まれDNA(デオキシリボ核酸)に影響を与え、その細胞を正常化する。【発明を実施するための最良の形態】【0018】そこで、本発明はビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、の投与眼局所の細胞活性調節や細胞の正常な分化誘導を動物実験により確認したことにより、眼創傷及び眼疾患患者の眼局所に直接投与し、眼の透明性と正常屈折を保ち、視機能の低下を防止しようとするものである。眼球、特に前眼部のビタミンDに調節される細胞は、角膜の上皮細胞、実質細胞、線維芽細胞、内皮細胞、結膜の杯細胞或いは杯細胞類似結膜上皮細胞、水晶体上皮細胞、眼内の貧食細胞、等であり、これら細胞の炎症や代謝異常の修復に活性型ではないビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、の局所投与でも効果が認められる。角膜上皮細胞より深い眼組織損傷或いは角膜代謝異常の修復時の細胞過形成および細胞代謝産物による光学的透明性阻害や屈折不良を防止するためにビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、を有効成分としてその眼科用組成物として使用する。通常、経口より摂取されたビタミンDは体内では肝や腎により活性型ビタミンDとなるが、本発明のビタミンD組成物は眼局所に於いて、炎症状態、代謝異常或いは角化状態等にある細胞類が自己のビタミンD水酸化酵素によりその細胞内に入ったビタミンDを活性型に変換し、核内のDNAに影響し、正常な細胞分化誘導を行うか、細胞内のRNA(リボ核酸)に影響し蛋白質の合成に影響し、それら細胞の細胞過生成、細胞代謝産物過生成、或いは、角化を自ら調節する。例えば、本発明は角膜実質細胞と角膜実質細胞に由来する線維芽細胞が、投与されたビタミンDを活性型に変換する酵素を持つという事を考慮して、前述の課題である第1の目的から第3の目的までを解決する為の手段とした。つまり、投与されたビタミンDの炭素C1位或いは炭素C25位が、角膜実質細胞や線維芽細胞のミトコンドリア或いはミクロソームの酵素により水酸化されてその細胞の正常化に必要な活性型ビタミンDとなると言う事である。活性型ビタミンDとなる量は角膜実質細胞とその分化した線維芽細胞の多さに依存する。つまり、角膜実質細胞がビタミンDを活性型ビタミンDに変換するが、角膜実質が炎症状態となり、実質細胞が線維芽細胞を分化・誘導し始めて、ビタミンDを活性型ビタミンDにする変換率が上昇する事を見出した。角膜手術後の患者に於いて、角膜実質に於ける線維芽細胞の増加は明らかであり、その増加が原因となる術後角膜屈折率変化及び角膜混濁を防ぐために、ビタミンDを配合した眼科用組成物、例えば点眼剤、を術後よりその眼に投与し、角膜上皮及び実質細胞活性を調節することにより炎症状態にある角膜上皮及び実質細胞の過形成及びその代謝産物過生成を抑制し、角膜屈折率変化及び角膜混濁による視力低下を予防する。尚、角膜屈折矯正術の内、角膜切開創の瘢痕過形成により屈折を変動させる事を目的とする屈折矯正ならば、本発明の眼科用組成物は適用とはなりにくい。又、白内障手術であれば、本発明の眼科用組成物の術後の患者への投与は水晶体嚢の水晶体上皮細胞に起因する混濁をも軽減する事となる。本発明は、ビタミンDとしてのエルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、或いはその類似体を有効成分とする白内障手術後の水晶体嚢混濁を防止するための眼科用組成物を提供する。【0019】又、ビタミンD類は260nm付近の紫外線に対して、最大の紫外線吸収曲線を持つと言う特徴を生かし、眼球組織を有害紫外線より保護するためにビタミンD類をその眼科用組成物として使用する。ビタミンDとしての、エルゴカルシフェロールやコレカルシフェロール、やその類似体、及び、活性型ビタミンDとしてステロール環A環炭素C1位と炭素C25位の内の少なくとも一つが水酸化された活性型ビタミンDが有効である。活性型ビタミンD類似体であるジヒドロタチステロールも範疇に入る。これにより、本発明の第5の目的を達成する。【0020】本発明は脂溶性であるビタミンD類を有効成分とした眼科用組成物とし、人眼への局所投与として患者の角膜の光学的透明性や屈折性を良くする事を特徴とした。又、ビタミンD類をエタノール、エーテルや界面活性剤、例えばレシチン或いはポリソルベート、を溶解剤として眼科用生理緩衝液で希釈し、眼科用組成物としても良い。ビタミンDが脂溶性である事より、植物油、例えばゴマ油、や油脂にビタミンD類を溶解して眼科用組成物としても良い。【0021】本発明の予防或いは治療用眼科用組成物としてはビタミンD類の濃度として局所投与でもあり、100μg/ml以内程度で良く、少なくとも、0.001μg/ml程度が良い。点眼時の1滴の量は通常、約20〜40μlである。活性型ビタミンDの眼科用組成物での濃度は1μg/ml以下の濃度が好ましい。つまり、本発明者は活性型ビタミンDの適量以上の局所投与の場合はその細胞にとって当然必要量以上の活性型ビタミンDとなり、その細胞自ら活性型ビタミンDを代謝する更なる水酸化酵素を産生し、本来の治療効果を減ずる状態となる可能性があると考えた。本発明の眼科用組成物を眼科患者の眼に投与することによりビタミンD、エルゴカルシフェロールやコレカルシフェロール、は角膜の実質及び線維芽細胞内の酵素により細胞にとって必要量のみ活性型ビタミンDとなり、その活性型ビタミンDが近接する或いは自ら炎症状態にある角膜実質細胞や角膜上皮細胞のレセプターに付着し、その細胞のDNAやRNAに影響を与え、細胞の正常な分化を誘導し、種々のサイトカインや蛋白質等の滲出物を調節する。【0022】ビタミンDであるエルゴカルシフェロールやコレカルシフェロールには細胞毒性が見られない事により、異常な濃度での投与でない限り、正常細胞には影響が無いことが考えられる。本発明の眼科用組成物を眼科患者の眼に投与しても、ビタミンDであるエルゴカルシフェロールやコレカルシフェロールが後眼部へは到達しにくく、後眼部のビタミンDによる治療が将来考えられるなら経口投与との併用がより有効となるであろう。薬物の角膜透過性は分子量の小さいもの、疎水性のものの方がより透過性が良いとされており、ビタミンDの角膜透過性は良い。例えば、コレカルシフェロールの分子量は384.6ダルトンである。【0023】角膜や結膜上の涙液及び角膜や結膜内に浸積したビタミンDは有意に有害紫外線を吸収する。ビタミンDは光線角膜炎や翼状片の予防に効果がある。又、エキシマレーザー屈折矯正角膜上層切除術等の特にヒトにある角膜ボーマン膜を切除した場合、紫外線がさらに眼に有害となる可能性もあるので、本発明の有害紫外線を吸収するビタミンDを配合した眼科用組成物が有効となる。本発明は眼科用薬物送達システムであるリポソーム、マイクロスフェア、ゲル状蛋白質、コラーゲン、治療用ソフトコンタクトレンズのいづれかにビタミンDを包埋或いは接着した眼科用組成物としても良い。本発明はビタミンDを粘性基剤としてポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、コラーゲン、脂肪酸、植物油、油脂等の内の少なくとも一つに混合し、粘性眼科用溶液として使える。剤型としては、特に、点眼剤、軟膏、コンタクトレンズ等が好ましい。【0024】角膜切除或いは角膜切開手術後の患者に於いて、術後角膜実質上に角膜上皮細胞が伸展し、実質上の欠如している上皮細胞の再生が数日で行われる。しかし一旦上皮再生が行われるものの、角膜切除辺縁部や実質が複雑に切除されている場所では上皮細胞及び実質細胞の過形成や細胞活性亢進が見られる。そこではそれら角膜上皮細胞や実質細胞の代謝産物による瘢痕形成により牽引が起こり、角膜屈折不良及び混濁による視力低下が起こる。これを防ぐためステロイド剤が主に使われているが、副作用としてステロイド緑内障やステロイド白内障の惹起が予想され、ステロイド剤の使用を回避する傾向にある。本発明のビタミンDの角膜切除或いは角膜切開手術後の患者への投与による角膜上皮細胞や実質細胞の過形成や細胞活性調節により、角膜屈折不良及び混濁による視力低下が防げる。本発明のビタミンDの眼への投与は少なくとも角膜上皮細胞再生速度に対し、顕著な加速性はない。【発明の効果】【0025】本発明は人眼球組織の透明性が受傷組織細胞の過形成やその過剰な代謝産物で損なわれる場合、これを予防する為にビタミンD配合の眼科用組成物をその患者に投与し、受傷組織の細胞活性を調節する事によりその眼の透明性を維持する。通常、眼科手術後や眼疾患の治療に薬剤、例えば抗生・抗菌剤、消炎剤、緑内障治療剤、が併用されるが、ビタミンDであるエルゴカルシフェロールやコレカルシフェロールには併用した事に起因する毒性の発現が無いと考えられる。【0026】本発明のビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK等は天然、人工合成のいづれの組成物でも良く、類似体でも良い。ビタミンD、コレカルシフェロール、の類似体ではコレカルシフェロール硫酸塩(分子量486.7ダルトン)、人工合成の活性型ビタミンD類似体では、ジヒドロタチステロールがある。涙液は両親媒性であり粘性がある。本発明のビタミンD類の点眼液はポリソルベート、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、植物油、油脂等の溶液に混合した粘性のある点眼剤とするとビタミンD類が眼の表面に止まっている時間が長く、眼外傷、結膜角膜乾燥症又は他の眼疾患を予防或いは治療するのに効果が高い。【0027】ビタミンD類は260nm付近の有害な紫外線に対して、最大の紫外線吸収曲線を持つと言う特徴を生かし、眼や皮膚を有害紫外線より保護するために、プロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK、或いはこれらの類似体、等の内の少なくとも一つを有効成分としてその眼科用組成物や皮膚用組成物として使用する。ビタミンDとしての、エルゴカルシフェロールやコレカルシフェロール、及び、活性型ビタミンDとしてステロール環A環炭素C1位と側鎖炭素C25位の内の少なくとも一つが水酸化された活性型ビタミンDが有効である。従来より活性型ビタミンD剤が乾癬の治療に使用されている事より、本発明の皮膚用組成物は皮膚に良いことが推察される。ビタミンKに於いても、260nm付近の有害な紫外線に対して、最大の紫外線吸収曲線を持つと言う特徴を生かし、眼や皮膚を有害紫外線より保護する眼科用組成物や皮膚用組成物として使用する。本発明の眼科用組成物の使用により眼球において有害紫外線より保護される組織は、角膜、結膜、水晶体、或いは網膜である。この有害紫外線より保護する眼科用組成物の剤型としては点眼剤、軟膏、又はコンタクトレンズが好ましい。毛髪と頭皮に本発明の皮膚用組成物を使用しても良く、毛髪・頭皮トリートメント・コンディショナー或いは毛髪トリートメント・コンディショナーとして応用出来る。【0028】本発明は脂溶性であるプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK、或いはこれらの類似体、等の内の少なくとも一つを化粧品や日焼け止め剤中に配合し、皮膚への局所投与とし、260nm付近の有害な紫外線の皮膚への照射を予防する事を特徴とした。本発明は従来より化粧品や日焼け止め剤に用いられている、溶液、軟膏、クリーム、ローション、スプレー、トリートメント・コンディショナー、等を剤型とした皮膚用組成物とする。化粧品の皮膚での使用は紫外線によるその皮膚のビタミンD合成を阻害するので、化粧品に応用したビタミンD配合の皮膚用組成物によりビタミンDをその皮膚より補給する事も出来る。又、頭皮に使用すれば、毛小皮も紫外線照射より守られ、脱毛が軽減される。【0029】本発明の有害紫外線より保護するための眼科用組成物や皮膚用組成物としては、プロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK、の濃度として局所投与でもあり、100μg/ml又はg、以内程度で良く、少なくとも、0.01μg/ml又はg、程度が良い。プロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンKには細胞毒性が見られない事より、異常な配合でない限り、眼組織や皮膚上皮細胞には影響が無いと考えられる。本発明の眼科用組成物や皮膚用組成物の使用により、眼や皮膚を覆うプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、或いはビタミンKは有意に有害紫外線を吸収し、眼や皮膚組織を有害紫外線から保護する。従来のビタミンDや活性型ビタミンD製剤を大量に経口投与した時にはビタミンD過剰症が見られ、血中カルシウムとリン酸が増加し、腎臓、動脈、平滑筋、肺などの軟部組織に石灰化が起きる。本発明の眼科用組成物や皮膚用組成物となるプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、或いはビタミンKは従来よりより少量で効果があり、目や皮膚より血中にそれらビタミンD類やビタミンK類がある程度入っても従来のような副作用の発現が考えられない。【0030】本発明のプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、或いはビタミンKは天然、人工合成のいづれの組成物でも良く、類似体でも良い。ビタミンK類似体として人工合成で水溶性のメナディオール二リン酸塩やメナディオン亜硫酸水素塩が開発されており、このビタミンK類似体も使用できる。【0031】米国特許、第4,335,120号は体内治療目的で活性型ビタミンDを皮膚より吸収させ、循環血流に乗せることを開示している。米国特許、第4,610,978号は皮膚治療目的で活性型ビタミンD皮膚クリームを開示している。米国特許、第5,254,538号は活性型ビタミンDによる歯周病の治療や眼科での角膜潰瘍や角膜擦過傷の治療を開示している。公表特許公報,5−503922号、及び公表特許公報、5−508655号には、ビタミンD化合物が、切創、刺創、角膜裂創等の外的上皮に対する創傷や、潰瘍性角膜炎のような潰瘍の処置に有効であることが記載されている。公開特許公報,63−145233号、及び特許公報、平4−43887号には、活性型ビタミンDを有効成分とする白内障治療剤が記載されている。公開特許公報,1−249714号、及び公開特許公報、2−178218号には、ビタミンD化合物を有効成分として含有する皮膚化粧料が、紫外線照射による皮膚障害を防止する作用を有することが記載されている。公開特許公報,5−320039号には、ビタミンK群を含有する美白化粧料が記載されている。【0032】以下製剤例及び試験例により本発明を更に詳細に説明する。【製剤例1】ビタミンD(コレカルシフェロール、分子量384.6ダルトン)1mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液0.1mlを更にポリソルベート80点眼液(0.5%−Tween80眼科用生理緩衝液)を溶剤として更に100倍に希釈し、ビタミンD濃度が1μg/mlの眼科用組成物を製造した。【製剤例2】ビタミンD(コレカルシフェロール)5mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液0.1mlを更に精製ゴマ油よりなる眼科用油性基剤で100倍に希釈し、ビタミンD濃度が5μg/mlの眼科用組成物を製造した。【製剤例3】ビタミンK2(メナキノン4、分子量444.7ダルトン)5mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液を更に精製ゴマ油よりなる眼科用油性基剤で100倍に希釈し、ビタミンK2濃度が5μg/mlの紫外線防止のための眼科用組成物を精製した。【製剤例4】活性型ビタミンD(カルシトリオール、1α,25−ジヒドロキシビタミンD)0.5mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液0.1mlを更にポリソルベート80点眼液(0.5%−TWeen80眼科用生理緩衝液)で100倍に希釈し、活性型ビタミンD濃度が0.5μg/mlの結膜角膜乾燥症の予防及び治療剤となる眼科用組成物を製造した。【製剤例5】ビタミンD(コレカルシフェロール)100mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液1mlを更に簡便な親水性ワセリン(3%−コレステロール、3%−ステアリルアルコール、8%−白ろう、86%−白色ワセリン)にて更に100倍に希釈し、ビタミンD濃度が100μg/mlの皮膚を紫外線より守る皮膚用組成物を製造した。【製剤例6】ビタミンD(コレカルシフェロール)10mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液0.1mlを更にポリソルベート80点眼液(0.5%−Tween80眼科用生理緩衝液)を溶剤として更に100倍に希釈し、ビタミンD濃度が10μg/mlの眼科用組成物を製造した。【製剤例7】ビタミンD(コレカルシフェロール)10mgをエタノール(純度99.9%)10mlにて希釈し、この希釈液0.1mlを更に中鎖脂肪酸トリグリセリドを溶剤として更に100倍に希釈し、ビタミンD濃度が10μg/mlの眼科用組成物を製造した。【0033】【試験例1】角膜外傷時の創傷治癒過程に於けるビタミンD、コレカルシフェロール、の有効性、安全性を試験した。白色家兎、体重2kg、4羽を使用した。鎮痛・麻酔薬の大腿部筋肉注射及び点眼麻酔後、家兎の右眼に直径5mmのトレパンにて角膜半層程度の円形の傷を角膜表面につけた後、ヘラにて円形内の角膜上皮及び実質を擦過し上皮細胞を剥離し、除去した。左眼は無処置とした。処置後、右眼に抗生剤、オフロキサシン、の点眼及び軟膏を投与した。2羽をA群、残りの2羽をB群とした。A群には、製剤例1で調製した眼科用組成物を処置翌日より1日3回4時間毎に点眼した。1回に1〜2滴、約20μl点眼した。B群にはビタミンDを含まない眼科用生理緩衝液を同様に1日3回4時間毎に点眼した。1週間目、2週間目、1か月目に全手術眼の角膜混濁程度を細隙灯顕微鏡にて観察した。評価を0(角膜混濁無し)から5(角膜混濁重篤)までの6段階に分類した。1週間目ではA群B群共に評価0であった。2週間目に於いて、B群の2眼に非常に軽度の混濁が角膜上皮下に見られた。特にトレパンにより受傷したと思われる部位の所々に筋状に非常に軽度の白濁が見られ、評価を1とした。A群の1眼に非常に軽度の混濁が角膜上皮下に見られ、評価1としたが、他の1眼は混濁が見られず、評価0とした。1か月目に於いては、B群の1眼に中等度の混濁が角膜上皮下に見られ、評価を3とした。B群の他の1眼は軽度の白濁があり、評価を1とした。A群の1眼に軽度の混濁が角膜上皮下に見られ、評価1としたが、他の1眼は混濁が見られず、評価0とした。この1か月目に於いて、評価を3としたB群の1眼は肉眼的にも混濁が分かり、円形内が薄く白濁していた。【試験例2】角膜外傷時の創傷治癒過程に於けるビタミンD、コレカルシフェロール、の有効性、安全性を試験した。実験には家兎を使用した。日本在来白色家兎、体重約2kg、4羽を使用した。麻酔下にて、エキシマ・レーザー機器(サミット社、米国製)により右眼角膜中央部にレーザー照射した。レーザー照射は表面切除(PTK)モードにて、エネルギー密度165mj/cm、切除率0.25μm/パルス、300発、切除円面直径4.5mmとした。レーザー照射処置した4羽の兎は無作為に1群2羽の2群に群分けされ、それぞれ薬剤投与群、対照群とした。又、処置当日、及び翌日に全ての兎に抗生剤を点眼投与した。薬剤投与群には製剤例7のビタミンD溶液(コレカルシフェロール、10μg/ml)を、また、対照群にはビタミンDを配合しない基剤(中鎖脂肪酸トリグリセリド)を1回約20μl、1日3回、14日間、レーザー照射24時間後から、それぞれの兎の手術眼に点眼投与した。角膜にレーザー照射後、7、15日後に散瞳剤による散瞳後に細隙灯顕微鏡にて観察した4眼の角膜所見に基づき角膜の混濁程度を判定した。判定方法は、レーザー照射した領域内の辺縁部と中央部を角膜混濁なし(0)から完全な白濁(4)までの5段階のスコアとした。7、15日目の観察では対照群に於いて角膜のレーザー照射領域全体に白濁が見られ、その程度は照射辺縁部に於いて強く、中央部ではやや弱かった。薬剤投与群でも照射辺縁部約1mm程度の環状の混濁は認められたものの中央部はほぼ透明で、その程度、照射部全域としての平均スコア、は7日目で対照群3に対して薬剤投与群1、15日目においても対照群3に対して薬剤投与群1となり、対照群に対する薬剤投与群のスコアは有意に低かった。角膜創傷治癒調節に於いては、本発明のより粘性な眼科用組成物の方が同様な試験での粘性が少なくなり水性は基剤を用いたときより効果が著しく良かった。この試験例2に於いてもビタミンD、コレカルシフェロール、の角膜創傷治癒調節効果が確認された。試験例2に於いて兎の屠殺後に眼球を摘出し、角膜を組織学的に比較検討した結果では特に照射辺縁部の上皮細胞の過形成は薬剤投与群では対照群より有意に少なく、細隙灯顕微鏡観察所見と一致した。このことは、本発明によるビタミンDよりなる眼科用組成物の投与により、角膜混濁や角膜屈折異常を軽減すると同時に、エキシマ・レーザー角膜切除術後の屈折矯正不足を理由とする患者への再手術を回避出来ると言う利点をももたらす。【試験例3】結膜角膜乾燥症と活性型ビタミンDがその眼に及ぼす影響を実験した。生後3週間目のラット6匹(スプラグー・ドーリー系)を使用した。ラット全部をビタミンA欠乏餌を4週間与え、結膜角膜乾燥症状態を惹起し、5週間目より3匹をD群としてビタミンA欠乏餌を与えながら製剤例4の結膜角膜乾燥症の予防及び治療剤である活性型ビタミンD点眼、残りの3匹をC群としてビタミンA欠乏餌を与えながら、活性型ビタミンDを含まない0.5%−ポリソルベート80(Tween80)点眼液よりなる眼科用剤の点眼を行い対照群とした。各点眼はピペットに約20μl取り、1回1〜2滴点眼した。点眼は1日3回両眼に行った。点眼開始2週間目のフルオレセイン・ナトリウム染色による細隙灯顕微鏡観察において、D群には点状表層角膜炎が見られず、C群のそれぞれの眼には、特に角膜中央部直径約2mmの円内に僅かながら点状の染色が見られた。この細隙灯顕微鏡観察に於いて表層角膜炎の炎症状態は明らかにC群のラットはD群より炎症が強い事が分かった。C群のラットはD群より元気なく、排泄物もD群より少なく、飼育6週間目で実験を終了した。結果として、D群がC群より僅かではあったが、明らかに結膜角膜乾燥症の予防及び治療を行い、角膜や結膜を保護している事が分かった。【試験例4】紫外線が角膜、眼瞼、眼粘膜等に及ぼす影響を実験した。ラット6匹(スプラグー・ドーリー系)を使用した。2匹をD群でビタミンD点眼、2匹をK群でビタミンK2点眼、2匹をC群で対照群とした。D群、ビタミンD点眼には製剤例2の眼科用組成物を点眼した。K群、ビタミンK2点眼には製剤例3の眼科用組成物を点眼した。C群、対照群には眼科用精製ゴマ油を点眼した。点眼はピペットに約10μl取り、1回1滴点眼した。点眼は1日3回両眼に行い、紫外線照射1週間前より開始した。紫外線照射には通常の紫外線滅菌器(15W放電管、ピーク紫外線波長254nm)を使用し、この滅菌器の中で飼育した。滅菌器で飼育2日目には、細隙灯顕微鏡観察に於いて、C群の全眼に軽度の点状表層角膜炎が見られた。D群とK群の全眼には極軽度の点状表層角膜炎が見られた。滅菌器で飼育3日目には、肉眼的に、C群の全眼に重篤な眼瞼・結膜浮腫及び点状表層角膜炎が見られ、D群とK群の全眼には軽度の結膜浮腫や点状表層角膜炎が見られた。フルオレセイン・ナトリウムでの染色による細隙灯顕微鏡観察を行わずにC群に重篤な眼瞼及び結膜浮腫や点状表層角膜炎が見られたので実験を中止し、紫外線が眼に及ぼす影響の実験を終了した。結果として、D群とK群がC群より明らかに紫外線を防止し、眼組織である眼瞼、結膜及び角膜等を保護している事が分かった。【試験例5】白内障手術後の水晶体嚢混濁程度を家兎により実験した。日本在来白色家兎、体重2kg、4羽を使用した。兎の右眼、手術眼、を散瞳剤により散瞳した。鎮痛・麻酔薬の大褪部筋肉注射と点眼麻酔により麻酔後、兎の右眼の角膜を穿刺し、粘弾性物質で前房を満たし、水晶体前嚢切除を直径約5mmの極力円形になるように行った。その後、幅3.5mmの各膜切開を強度・角膜縁から約2mmの位置より角膜内弁が出来るように角膜接線に対し45度程度の角膜をもって施行した。超音波水晶体乳化吸引術を行い、水晶体核と水晶体皮質を吸引・除去し、水晶体嚢内と前房を灌流液で洗浄し、角膜創口を縫合せずに手術を終了した。術中に使用した粘弾性物質と灌流液には術直後の前房内フィブリン析出及び一過性眼圧上昇を極力防止する為に、アンチトロンビンIIIを50国際単位/ml配合して使用した。手術眼には手術後、結膜・角膜上に点眼及び軟膏の抗生剤を投与した。無作為に選んだ2羽を薬剤投与群として製剤例6の眼科用組成物を点眼し、他の2羽を対照群としてビタミンDを含まない0.5%−ポリソルベート80(Tween80)点眼液よりなる眼科用剤の点眼を行った。各点眼はピペットに約20μl取り、1回に全量点眼した。点眼は1日3回手術眼に行った。抗生剤を1日3回及び散瞳剤を1日1回それぞれ手術後3日間手術眼に投与した。手術後2週間目の散瞳剤での散瞳後に於ける手術眼の細隙灯顕微鏡に於いて、水晶体前嚢切除辺縁に帯状の白濁が手術全眼にあり、その帯状の白濁が薬剤投与群においては対照群の半分程度で、薬剤投与群の方の帯状の白濁の幅が有意に狭かった。瞳孔領域にある水晶体後嚢も薬剤投与剤の方の透明度が高かった。特に対照群で、前嚢と後嚢の癒着していない部分の白濁が強く観察された。なお、対照群の1羽では角膜切開した角膜裏面が虹彩前面と癒着し、瞳孔が変形していた。薬剤投与群の角膜創口は全羽とも透明感が対照群より高く、瘢痕化が少なかった。この瘢痕化の程度を、兎を麻酔下で、角膜形状解析装置により角膜中央直径3mmの範囲での乱視度を測定したところ、薬剤投与群においては平均約1.5ジオプトリーで、対照群では平均約2.5ジオプトリーであった。これらの角膜及び水晶体嚢の所見はビタミンD、コレカルシフェロール、が眼局所において角膜や水晶体嚢の白濁や角膜の屈折異常を防止していることを示している。【0034】試験例1〜5に於いてビタミンD類やビタミンKによると思われる角膜へのカルシウム吸着による角膜混濁、結膜の充血、前房中へのフィブリン析出、眼内炎等の副作用は見られなかった。本発明によるビタミンDの眼局所への投与は炎症状態で損傷組織修復過程にある角膜上皮、実質細胞そして水晶体上皮細胞の活性及び代謝を調節し、それら細胞の代謝産物過生成を抑制することが確認された。又、本発明の眼科用組成物の点眼により、眼瞼、結膜、角膜上や角膜組織内や涙液中のビタミンDが有害紫外線からそれら組織を有意に遮断している事が示唆された。そして、眼瞼や結膜を有害紫外線から守っていることより、皮膚用組成物を出来ることが確認された。【0035】上記試験結果は、本発明の眼科用組成物及び皮膚用組成物が人においても有効であり且つ安全である事を示している。本発明のビタミンD或いは活性型ビタミンDのいづれかの眼局所への使用により、その眼の結膜角膜乾燥症の予防及び治療が行える。更に、眼科用組成物として、粘性水溶液等の涙液近似の水溶液に配合すればより高い効果が得られる。本発明のビタミンD眼科用組成物の眼局所への投与は、眼科手術後の創傷治癒時に応用できる。本発明のビタミンD眼科用組成物の角膜切開・角膜切除術後の投与で角膜の混濁や屈折不良、及び有害紫外線を防止でき、視力の低下が予防できる。従来より角膜手術後や角膜疾患時のステロイド点眼投与で問題となっている副作用が回避出来る。ビタミンD摂取不足状態の眼科患者、或いは腎臓や肝臓の機能の低下した眼科患者において本発明のビタミンDの眼局所投与は効果が高い。本発明のビタミンDの角膜局所投与は、角膜実質及び分化した線維芽細胞に活性の程度を依存しているので、ある程度のビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、の配合濃度過多におていも眼組織の創傷治癒調節効果の変動が殆ど無い。つまり、ビタミンD、コレカルシフェロール、は活性型ビタミンDに比べてある程度高濃度においても角膜外傷時の角膜細胞過形成やその代謝産物過生成に対する調節効果の減少は見られなかった。ビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、は活性型ビタミンDに比べて副作用として知られているカルシウム血症を起こさなく、安全であることが知られている。そして、本発明のビタミンD類の前眼部局所投与は通常のビタミンD剤過剰摂取時に起こるかもしれないビタミンD過剰症に晒される危険性が殆ど無い。本発明のビタミンD類の前眼部局所投与は、ビタミンDに細胞毒性が無いことより安全に使用出来る。ビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、は他剤との併用でもビタミンDによる毒性の発現が考えられない。【0036】本発明のビタミンD類の眼科用組成物による眼に対する有害紫外線防止により、光線角膜炎、角膜潰瘍、角膜変性症等の紫外線を原因とする角膜疾患が防止できる。更に、本発明のビタミンD、エルゴカルシフェロール或いはコレカルシフェロール、の眼科用組成物により、白内障術後の水晶体嚢の混濁も軽減出来る。本発明のプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK、或いはこれらの類似体、のいづれかの皮膚局所への使用は、その皮膚を有害紫外線帯域から保護できる。更に、眼科用組成物としても応用できる事より眼に入っても本発明のプロビタミンD、プレビタミンD、ビタミンD、活性型ビタミンD、ビタミンK、或いはこれらの類似体、等による副作用は考えられない。 ビタミンDのステロール環A環炭素C1位と側鎖炭素C25位の内の少なくとも一つが水酸化された活性型ビタミンDを有効成分とする乾性角結膜炎或いは結膜角膜乾燥症の予防剤、及び治療剤。 ビタミンDがエルゴカルシフェロール、或いはコレカルシフェロールである請求項1に記載の眼科疾患の予防剤、及び治療剤。


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