生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_結晶マルチトールの製造方法
出願番号:1995313721
年次:2008
IPC分類:C07H 15/04,B01J 25/02,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

山崎 史人 嶋津 幸四郎 立野 芳明 真柄 光男 岡本 直記 JP 4106078 特許公報(B2) 20080404 1995313721 19951108 結晶マルチトールの製造方法 三菱商事フードテック株式会社 000223090 太田 恵一 100080447 山崎 史人 嶋津 幸四郎 立野 芳明 真柄 光男 岡本 直記 20080625 C07H 15/04 20060101AFI20080605BHJP B01J 25/02 20060101ALN20080605BHJP C07B 61/00 20060101ALN20080605BHJP JPC07H15/04 DB01J25/02 XC07B61/00 300 C07H 15/04 B01J 25/00-02 特開平02−023881(JP,A) 特開平02−042997(JP,A) 特開昭61−180797(JP,A) 特開平2−92296(JP,A) 特開昭57−134498(JP,A) 特開平1−273593(JP,A) 特開昭61−180795(JP,A) 特公昭47−10977(JP,B1) 特公昭40−20209(JP,B1) 久保松照夫ほか,ラネー触媒,共立出版株式会社,1971年 5月10日,8頁 2 1997132587 19970520 15 20021017 大宅 郁治 【0001】【発明の属する技術分野】【0002】本発明は、結晶マルチトールの製造方法に関する。【0003】【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】【0004】結晶マルチトールは、マルトースを接触水素化し、結晶化又は固化することにより製造される糖アルコールであり、砂糖に近い甘味質を有し、微生物により発酵されにくいため虫歯の原因にならず、人の消化酵素では消化されにくいなどの特徴がある。【0005】更に、結晶マルチトールは、非吸湿性、熱安定性、インシュリン分泌を促さないことや各種ミネラルの吸収に好ましい影響を与える等の機能を有することから、食品、薬品、化粧品などの分野において広範囲に使用されている。【0006】結晶マルチトールを製造する方法には、予め純度の高いマルトースを調整し、水添、結晶化する方法と、工業的に比較的簡単に得られるマルトース純度50〜80%のマルトースシロップを水添した後、クロマトグラフィーにより分別した高純度のマルチトールシロップを結晶化する方法が知られている。【0007】前者の方法として例えば、特開昭57−134498号公報で開示されている方法は、馬鈴薯澱粉などの地下澱粉を液化酵素で低DE(デキストロース当量)に液化し、それにβ−アミラーゼとイソアミラーゼなどの枝切り酵素を作用させて糖化、精製し、必要に応じてマルトースを結晶化し、固形物中のマルトース純度が93〜100対固形分重量(以下、単に「%」ということがある)のマルトースを調整する。次にこれを水添して高純度マルチトールを調整し、結晶化することによりマスキットを生成させて分蜜し、結晶マルチトールを回収するという方法である。【0008】後者の方法の例として、特開昭61−180797号公報には、濃度25〜45%、固形物中のマルトース純度50〜80%のマルトースシロップを水添して相当するマルチトールとした後、クロマトグラフィー分別により固形物中のマルチトール純度が87%以上の画分を得て、75〜92%の範囲に濃縮し、結晶化するという技術が開示されている。【0009】しかしながら、これら従来の方法には数多くの欠点があり、工業的に結晶マルチトール及びそれを含有する含蜜結晶を製造する方法として満足の出来るものではなかった。【0010】例えば、特開昭57−134498号公報の方法では、澱粉を液化する段階で低DEの液化物を得て糖化する必要があるが、通常の濃度では粘度が極めて高くなる為、低い濃度で液化・糖化する必要がある。【0011】また、糖化の際に多量の酵素を必要とし、更に高価なイソアミラーゼを使用しなければならない。【0012】また、糖化で得られるマルトースは純度が90〜93%程度にとどまり、ここからマルトース純度を高める為には結晶化を必要とするなど、製造費用が嵩むことから、この方法は工業的に適した方法とはいえない。【0013】更に、特開昭57−134498号公報の方法では、固形物中のマルチトール純度が通常92%程度のマルチトール水溶液が晶析、分蜜されるが、その際多量に発生する蜜からは再度結晶を取り出すのは困難であり、ここでの副成物は付加価値の低い安い還元麦芽糖水飴や還元澱粉加水分解物相当の液製品として販売する以外に利用できないことから、この方法も経済的に不利な製造方法である。【0014】また、特開昭61−180797号公報の方法は、使用されるマルトース純度が50〜80%と低くブドウ糖やオリゴ糖を多く含有するため、水添後のクロマト分離が難しく、高純度のマルチトールを得ようとすればその回収率が低くなる。逆に回収率を高くしようとするとマルチトール純度が低下し、その後の結晶化が困難になる。【0015】更に、クロマト分離工程から付加価値の低いマルチトール低含有糖液が多く副成し経済的に不利であるという課題が残されている。【0016】従って、本発明の目的は、前記の種々の問題を解決した固定床用のラネー触媒を得、該ラネー触媒を使用して高純度の結晶マルチトールを低コストで製造することにある。【0017】【課題を解決するための手段】【0018】本発明者等は、前述の課題を解決するため、鋭意検討した結果、澱粉を液化した後に汎用性の高い酵素で糖化して得られるマルトース純度81〜90%の糖液が比較的安価に入手出来ることに着目し、一連の工程を連続的に行うことにより前記課題を解決することに成功し、本発明を完成するにいたった。【0019】本発明の課題を解決するための手段は、下記のとおりである。【0020】第1に、結晶マルチトールを製造する方法において、1)固形分中にマルトースが81〜90重量%含まれる濃度30〜75重量%のシロップを連続接触水素還元して相当する糖アルコールシロップを得る第一工程、2)糖アルコールシロップを陽イオン交換樹脂を充填した塔に連続的に供給してクロマト分離し、固形分中にマルチトールが95重量%以上含まれるマルチトール高含有シロップ画分を得る第二工程、3)マルチトール高含有シロップ画分を濃縮した後、連続的に結晶化して、結晶マルチトールと母液とを得、該母液が第一工程で得られた糖アルコールシロップに連続的に混合され第二工程に供される第三工程、の各工程を逐次経由することを特徴とする、結晶マルチトールの製造方法。【0021】第2に、第一工程において連続接触還元が、ニッケルとアルミニウムの溶融物を急冷し、そのまま又は一度破砕した後に分級し活性化されたラネー触媒またはその粉末をペレット状に成形したラネー触媒により連続的になされる上記第1に記載の結晶マルチトールの製造方法。【0022】第3に、第三工程において結晶化が、二段以上の直列に連結した結晶缶により連続的になされる上記第1又は第2に記載の結晶マルチトールの製造方法。【0023】第4に、第三工程において結晶化が、60〜10℃の温度範囲で行われる上記第3記載の結晶マルチトールの製造方法。【0024】本発明に原料として使用されるマルトースは、固形分中にマルトース純度が81〜90%含まれていればよく、馬鈴薯澱粉、コーンスターチなどの澱粉の由来は問われないが、比較的安価な酵素を使用したオリゴ糖の含有量が少ないマルトースが、クロマト分離、結晶化工程を容易に実施することができる。【0025】固形分中のマルトース純度が81%未満の場合、マルチトール画分に他の成分が混入しやすく、クロマト分離でマルチトール高含有シロップを得る為にはマルチトールの回収率が低くなる。【0026】また、マルチトールの回収率を高くするとマルチトール画分のマルチトール純度が低下し、結晶マルチトールの収率が低くなるばかりか、第三工程で得られた母液中のマルチトール純度も低くなり、該母液を第一工程で得られた糖アルコールシロップに混合した場合、引き続く第二工程のマルチトール回収率が低下し、不利である。【0027】一方、固形分中のマルチトール純度が90%を越える原料は、そのものを製造する為に高価な酵素を必要とする等、安価に入手するのは極めて困難であり、このものを原料とすることは工業的に適さない。【0028】本発明の第一工程におけるマルトース濃度は30〜75%が好ましい。【0029】30%未満の場合は、取扱数量が大きくなり生産性が悪いばかりでなく、第三工程での濃縮費用が高くなる。【0030】第二工程における連続接触水素還元では、通常は固定床用ラネー触媒が使用され、好ましくは、ニッケルとアルミニウムの溶融物を急冷し、そのまま又は一度破砕した後に分級し活性化されたラネー触媒またはその粉末をペレット状に成形したラネー触媒が使用される。連続接触水素還元を実施する際の反応温度は110〜150℃であり、好ましくは、120〜145℃である。水素圧力は、通常40〜200kg/cm2 程度であり、好ましくは50〜150kg/cm2 である。【0031】75%を越えた場合は、水添後の糖アルコールシロップのマルチトール純度が低下することが多く、好ましくない。【0032】本発明の第一工程で使用される触媒は、糖類の接触水素還元に使用される通常の触媒は殆ど使用出来るが、好ましくは、ニッケルとアルミニウムの溶融物を急冷し、そのまま又は一度破砕した後に分級し活性化されたラネー触媒またはその粉末をペレット状に成形したラネー触媒を固定床に充填し連続的に還元することが有利である。【0033】粉末をペレット状に成形する方法は、連続使用に長時間耐えうる強度に成形されればよく、例えば、合金の粉末を有機ポリマー及び必要により成形助剤と混合し、該混合物を押し出し成形又はプレスによって所望の成形体に成形した後焼成することで調製される。【0034】本発明の接触水素還元条件としては、マルトースが顕著に分解しない条件であればどのような条件でも採用できるが、通常は10Kg/cm2以上、好ましくは50〜150Kg/cm2の水素加圧下で、90〜150℃で反応するのが好ましい。【0035】接触水素還元後、得られた糖アルコールシロップは、必要に応じて触媒を除去した後、更に必要に応じて活性炭やイオン交換樹脂で脱色、脱イオンする。【0036】本発明の第二工程で用いる陽イオン交換樹脂は、市販されている殆どの樹脂を採用できるが、スチレン−ジビニルベンゼンの架橋重合体にスルホン酸基が結合した強酸性陽イオン交換樹脂にナトリウムイオン又はカルシウムイオンをチャージしたものを使用するのが好ましい。【0037】本発明の第二工程のクロマト分離は、回分式、又は擬似移動床式、単塔式、多塔式の何れもが使用できる。【0038】第二工程で得られるマルチトール高含有シロップ画分は、固形分中にマルチトールが95%以上含まれる様にクロマト分離条件が選定される。【0039】従来、95%以上の純度でマルチトール高含有画分を経済的に得ることは難しかったが、本発明ではこれが可能となった。【0040】固形分中のマルチトールが95%未満の場合は、続く第三工程の結晶化の際に結晶が生成しにくく、また結晶収率が低くなる。【0041】本発明の第三工程ではマルチトール高含有シロップ画分を濃縮した後、結晶化して結晶マルチトールと母液とを得るが、濃縮の際に水分を完全に除去しないことが結晶化の進行に不可欠であり、その濃縮の程度は60〜90%とするのが好ましい。【0042】本発明の第三工程の結晶化は、作業性を容易とするためにも連続式で行うのが好ましい。【0043】更に、結晶収率を高める為には、二段以上に直列に結晶缶を連結し、温度勾配を緩やかに設定することで結晶を成長させることが好ましい。【0044】結晶化の温度は、60〜10℃の範囲で行われる。【0045】60℃を越える温度では結晶が析出しないか、または析出した場合でも回収率が悪く、工業的に適さない。【0046】10℃未満の温度では、結晶スラリーの粘度が高くなり、析出した結晶の分離が困難となる。【0047】第三工程で析出した結晶マルチトールは、遠心分離器、フィルタープレス等により母液と分離される。【0048】該母液は第一工程で得られた糖アルコールシロップに一定の比率で連続的に混合され、第二工程のクロマト分離に供され、マルチトール高含有画分とオリゴ糖を多く含む画分に分けられ、マルチトール高含有画分は最終的には連続結晶化工程に供され結晶マルチトールが得られる。【0049】この比率はクロマト分離工程における供給側と流出側の重量がバランスのとれた状態で一定に保たれ、該母液の混合された糖アルコールシロップは第一工程で得られた糖アルコールシロップよりマルチトール含量が数%高くなる。【0050】【実施例】【0051】以下に試験例、実施例を掲げて更に具体的に本発明の方法を説明するが、本発明の技術的範囲は以下の例に制限されるものではない。【0052】【実施例1】【0053】まず、本実施例に使用する水素添加装置について説明すると、該装置は、図1に示すように、図中A、B、C、Dで示される0.5リットルのジャケット付きステンレス製耐圧容器(内径2.1cm、高さ160cm)を4本直列に接続し、塔Aの下部に原料仕込みポンプEを予熱器Fを介して接続し、塔Dの上部に冷却器Hを介してサンプリングポットIを接続すると共に、液貯めポットJを接続したものである。該装置の作用を説明すると、水素ガスは塔A下部より入り、塔D上部より出、液貯めポットJで液部と分離され、流量計Kと調節弁Lを通って大気に放出される。また、予熱器F及び塔A、B、C及びDのジャケットには加熱したオイルを流して一定の温度に保持する。通常はバルブMを開放し、バルブN、O及びPは閉鎖され、塔Dより出た反応液がポットJに貯まり、時々バルブPより抜かれる。サンプリング時にはバルブMを閉鎖し、バルブNを開放してポットIよりバルブOを通してサンプルが抜かれる。【0054】[合金の製造]ニッケル金属6Kgとアルミニウム金属6Kgを加熱溶融し、ノズルを通して20cm下の冷却水面に滴下した。得られた急冷ランプ合金の粒径は1mm〜15mmの混合物であった。これを破砕機にて破砕し、篩にかけて粒径2〜4mmの急冷ランプ合金4.98Kgを得た。【0055】[合金の展開]50リットルの加熱ジャケット付きステンレス容器に10%NaOH水溶液34Kgを入れ、50℃に加熱し、ステンレス製篭に入れた前記急冷ランプ合金4.6Kgをその中に入れた。温度60℃で30分間保持した後、篭を引き上げ水洗した。このとき得られた触媒の展開率は21.6%であった。【0056】[水素化反応]前記反応容器に展開した触媒を充填した。次いで各塔を140℃に加熱し、グルコース1.4%、マルトース81.5%、マルトトリオース11.7%、4糖以上5.4%の糖組成の50%マルトース水溶液をポンプEより毎時1.2リットルの速さで流した。また、水素圧を150Kg/cm2に保持し、水素流量を毎時20リットルに調製した。これを20日間連続運転した。流出した液576リットルの純度を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、水溶液の組成は、ソルビトール1.8%、マルチトール81.5%、マルトトリイトール11.3%、4糖アルコール以上5.3%、未還元物0.05%であった。【0057】[分画装置]次に、本実施例に使用する分画装置について説明すると、該装置は、図2に示すように、10本のジャケット付きステンレス製の塔2A〜塔2Jを直列に連結し、塔2Aの上部に、予熱器2V及び開閉バルブ2Mを介して水素化液仕込みポンプ2Lを接続すると共に、予熱器2V及び開閉バルブ2Pを介して仕込みポンプ2Nを接続し、他方、塔2Jの下部に、切り替えバルブ2Rを介して、分離液タンク2Sと分離液タンク2Tとを接続したものである。そして、該分画装置によると、塔2Jの下部より、分離液が、切り替えバルブ2Rを通して分離液タンク2S及び2Tに送られる。なお、各塔2A〜2Jには、強酸性イオン交換樹脂のカルシウム型を100リットル充填する。【0058】[分画]各塔2A〜2Jを60℃に保ちつつ、バルブ2Mを開き、バルブ2Pを閉じ、切り替えバルブ2Rを分離液タンク2T側に開く。そして、濃度60%に調製した前記水素化液12Kgをポンプ2Lを通して毎時50リットルの速さで送る。次にバルブ2Mを閉じ、バルブ2Pを開き、仕込みポンプ2Nで水を毎時50リットルの速さで180分間送る。この仕込み操作を繰り返す。一方、タンク2T側の流出糖液のマルチトール純度が97.0%になったら、切り替えバルブ2Rをタンク2S側に切り替える。次いでこの流出糖液のマルチトール純度が97.0%より小さくなったらすぐに切り替えバルブ2Rをタンク2T側に切り替える。流出側ではこの操作を繰り返す。得られたタンク2Sの分画液とタンク2Tの分画液の重量、濃度及び糖組成は表1の通りであった。【0059】【表1】【0060】[結晶化装置]次に、本実施例に使用する結晶化装置について説明すると、該結晶化装置は、図3に示す通り、60リットルのジャケット付きタンク3Aと同容量のタンク3Bをパイプ3Cを介して連結したものである。また、タンク3Aの上部には、タンク3Dの下部に設置されたポンプ3Eからのラインが接続されている。他方、タンク3Bには、結晶マルチトールのマスキットがタンク3Gに入る様に、該タンク3Bの上部に位置する出口3Fに管体が接続されている。また、タンク3A及びタンク3Bには、撹拌器が取り付けられている。【0061】[連続結晶化]前記分画工程より出たマルチトール高含有シロップ液を80%まで濃縮し、タンク3Dに入れる。また、タンク3Aとタンク3Bに、80%に濃縮されたマルチトール高含有シロップ液を、それぞれ35Kg入れ、温度を60℃にする。次に、結晶マルチトールの種結晶100gを両タンクに入れ、撹拌しながら、タンク3Aは40℃に、タンク3Bは25℃まで20時間かけて徐々に冷却し、引き続き連続結晶化を開始する。タンク3Dの液をポンプ3Eより毎時2.9Kgの速さでタンク3Aに送る。タンク3Aは常時40℃に、タンク3Bは25℃に保持する。タンク3Gにたまったマスキットは、遠心分離器で結晶マルチトールと母液に分離した。3日間連続運転を行ったが、結晶化の状態は変わらなかった。また、遠心分離後の結晶と母液の分析結果は表2の通りであった。【0062】【表2】【0063】[結晶化母液の第一工程糖アルコールシロップへの混合]第一工程の糖アルコールシロップ7.6Kgに対し、濃度60%に調製した前記母液4.4Kgを混合し、その混合液を前記と同様の方法で連続的に分画した。この時の糖アルコールシロップと母液の混合物の組成は、マルチトール86.6%、ソルビトール1.3%、マルトトリイトール8.1%、4糖アルコール以上4.0%であった。また、分画により得られたタンク3S液とタンク3T液の重量、濃度及び糖組成は表3の通りであった。【0064】【表3】【0065】【実施例2】【0066】水素化装置及び分画装置は、すべて実施例1と同じものを使用した。【0067】[合金の展開]50リットルの加熱ジャケット付きステンレス容器に10%NaOH水溶液34Kgを入れ、50℃に加熱した。実施例1と同じ合金破砕品4.6Kgをステンレス製篭に入れ、前記NaOH水溶液に入れた。温度60℃で60分間保持した後、篭を引き上げ水洗した。このとき得られた触媒の展開率は36.2%であった。【0068】[水素化反応]前記反応容器に展開した触媒を充填した。次いで各塔を140℃に加熱し、グルコース1.8%、マルトース87.6%、マルトトリオース6.7%、4糖以上3.9%の糖組成の50%マルトース水溶液をポンプ3Eより毎時1.2リットルの速さで流した。また、水素圧を150Kg/cm2に保持し、水素流量を毎時20リットルに調製した。これを20日間連続運転した。流出した液576リットルの純度を液体クロマトグラフィーにより測定した。その結果、水添液の組成は、ソルビトール1.9%、マルチトール87.6%、マルトトリイトール6.8%、4糖アルコール以上3.7%、未還元物0.06%であった。【0069】[分画]各塔2A〜2Jを60℃に保つ。バルブ2Mを開き、バルブ2Pを閉じ、切り替えバルブ2Rをタンク2T側に開く。濃度60%に調製した前記水素化液12Kgをポンプ2Lを通して毎時50リットルの速さで送る。次にバルブ2Mを閉じ、バルブ2Pを開き、仕込みポンプ2Nで水を毎時50リットルの速さで180分間送る。この仕込み操作を繰り返す。一方、タンク2T側の流出糖液のマルチトール純度が97.0%になったら、切り替えバルブ2Rをタンク2S側に切り替える。次いでこの流出液が97.0%以下になったらすぐに切り替えバルブ2Rをタンク2T側に切り替える。流出側ではこの操作を繰り返す。得られたタンク2Sの分画液とタンク2Tの分画液の重量、濃度及び糖組成は表4の通りであった。【0070】【表4】【0071】[結晶化装置]次に、本実施例で使用する結晶化装置について図4を参照しながら説明すると、該結晶化装置は、60リットルのジャケット付きタンク4Aと同容量のタンク4Bをパイプ4Cを介して連結したものである。また、タンク4Aの上部には、タンク4Dの下部に設置されたポンプ4Eからのラインが接続されていると共に、タンク4Hの下部に設置されたポンプ4Iからのラインが接続されている。他方、タンク4Bには、結晶マルチトールのマスキットがタンク4Gに入る様に、該タンク4Bの上部に位置する出口4Fに管体が接続されている。また、タンク4A及びタンク4Bには、撹拌器が取り付けられている。【0072】[連続結晶化]前記分画工程より出たマルチトール高含有液を86%まで濃縮し、75℃に保温してタンク4Dに入れる。また、遠心分離した母液をタンク4Hに入れる。タンク4Aとタンク4Bに、それぞれ75%濃度のマルチトール高含有液を70Kgずつ入れ、温度を60℃とする。次いで、結晶マルチトールシード100gを両タンクに入れ、撹拌しながら、タンク4Aは40℃に、タンク4Bは25℃まで20時間かけて徐々に冷却する。次に、タンク4D液をポンプ4Eより毎時2.1Kgの速さでタンク4Aに、また、タンク4H液をポンプ4Iを通して毎時0.8Kgの速さでタンク4Aに送る。タンク4Aは常時40℃に、タンク4Bは25℃に保持する。タンク4Gにたまったマスキットは遠心分離器で分離し、分離した母液はタンク4Hにもどした。3日間連続運転を行ったが結晶化の状態は変わらなかった。また、遠心分離後の結晶マルチトールと母液の純度は表5の通りであった。【0073】【表5】【0074】【実施例3】【0075】水素化工程及び分画工程は実施例1と同じ方法で行った。【0076】[結晶化装置]本実施例で用いる結晶化装置は、詳細な図示は省略するが、図3で示される装置のタンク3Aとタンク3Bの間にタンク3A、タンク3Bと同様の仕様のタンク(図示は省略するが、タンク3Yとする)を直列に設置し、結晶マルチトールスラリーがタンク3A、タンク3Y、タンク3Bの順に流れる様にした以外は図3と同様の装置を使用した。【0077】[連続結晶化]前記分画工程より出たマルチトール高含有シロップを80%まで濃縮し、タンク3Dに入れる。また、タンク3A、タンク3Y及びタンク3Bに80%マルチトール高含有シロップをそれぞれ70Kgずつ入れ、温度60℃にする。次に結晶マルチトール種結晶100gを各タンクに入れ、撹拌しながら、タンク3Aは45℃まで、タンク3Yは35℃まで、またタンク3Bは25℃まで20時間かけて徐々に冷却する。タンク3D液をポンプ3Eより毎時2.9Kgの速さでタンク3Aに送る。タンク3Aは常時45℃に、タンク3Yは35℃に、タンク3Bは25℃に保持する。タンク3Gにたまった結晶マルチトールマスキットは、遠心分離器で結晶マルチトールと母液とに分離した。3日間連続運転を行ったが、結晶化の状態は変わらなかった。また、遠心分離後の結晶と母液の純度は、表6の通りであった。【0078】【表6】【0079】【実施例4】【0080】水素化装置は実施例1と同様のものを使用した。【0081】[触媒の調製]ニッケル金属6Kgとアルミニウム金属6Kgを加熱溶融し、ノズルを通して20cm下の冷却水面に滴下した。得られた急冷ランプ合金の粒径は、1mm〜15mmの混合物であった。これを破砕機にて破砕し、篩にかけて100メッシュパスの粉末4.75Kgを得た。これにポリエチレンの微粉末0.25Kgを混合し、直径3mm、高さ5mmの大きさにプレスした。これを250℃に加熱してペレット状触媒を調製した。このペレットに10%NaOH水溶液34Kgを加え、60℃で40分間することにより、展開率20.4%の触媒を得た。【0082】[水素化反応]前記ペレットを実施例1と同様の装置に充填し、実施例1と同じ水素圧で、実施例1と同じ組成のマルトース50%水溶液を140℃で毎時1.0リットルの速さで流し、11日目より温度を145℃とし、更に21日目より毎時0.8リットルの速さで26日目まで流した。流出した545リットルの水素化液の組成は、ソルビトール2.4%、マルチトール81.2%、マルトトリイトール11.2%、4糖アルコール以上5.2%、未還元物0.12%であった。【0083】[分画]実施例1と同じ装置及び方法で分画を行った。結果は表7の通りであった。【0084】【表7】【0085】[連続結晶化]タンク3Aの温度が35℃、タンク3Bの温度が20℃である以外は実施例1と同様に行った。この時の結晶マルチトールと母液の分析結果は表8の通りである。【0086】【表8】【0087】【発明の効果】【0088】従来の種々の問題を解決した固定床用のラネー触媒を得、該ラネー触媒を使用して高純度の結晶マルチトールを低コストで製造することができる。【図面の簡単な説明】【図1】本発明を実施する際に使用する水素添加装置の概略図。【図2】本発明を実施する際に使用する分画装置の概略図。【図3】本発明の実施例1で使用する結晶化装置の概略図。【図4】本発明の実施例2で使用する結晶化装置の概略図。【符号の説明】A 塔F 予熱器H 冷却器J 液貯めポット 結晶マルチトールを製造する方法において、 1)イ)ニッケルとアルミニウムを溶融し、ロ)該溶融物を急冷することで急冷塊状合金を得、ハ)該急冷塊状合金をそのまま又は一度破砕した後に分級し、活性化することにより製造されるラネー触媒またはその粉末をペレット状に成形したラネー触媒を用いて、固形分中にマルトースが81〜90重量%含まれる濃度30〜75重量%のシロップを連続接触水素還元して相当する糖アルコールシロップを得る第一工程、 2)糖アルコールシロップを陽イオン交換樹脂を充填した塔に連続的に供給してクロマト分離し、固形分中にマルチトールが95重量%以上含まれるマルチトール高含有シロップ画分を得る第二工程、 3)マルチトール高含有シロップ画分を濃縮した後、連続的に結晶化して、結晶マルチトールと母液とを得、該母液が第一工程で得られた糖アルコールシロップに連続的に混合され第二工程に供される第三工程、の各工程を逐次経由することを特徴とする、結晶マルチトールの製造方法。 第三工程において結晶化が、二段以上の直列に連結した結晶缶により連続的になされる請求項1に記載の結晶マルチトールの製造方法。


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